図書カード6年1組ぺんぺん<7月8日>
書きかけの記事をあげていったら、
どんどん日にちがずれてしまって、
もう、ほとんど読み終わってしまってるけど、
今日は、木曜日分の貸し出し記録で。

*図書カード6年1組ぺんぺん*

「もいちどあなたにあいたいな」新井素子
「お釈迦様もみてる 自分応援団」今野緒雪
「大阪おもい」坪内祐三
「静人日記」天童荒太
「幕末の尼将軍―篤姫」童門冬二
「ねたあとに」長嶋有
「花と流れ星」道尾秀介


道尾秀介も、
最近気になってる作家さんだし、
評論家の坪内祐三が、
独自の視点でとらえた新たな都市論、
「ぴあ関西版」連載のエッセイ「まぼろしの大阪」をまとめた、
単行本の第2弾「大阪おもい」も、
素晴らしく面白かったのだが、
今日のピックアップは、
新井素子
でいこうかね。


『もいちどあなたにあいたいな』新井素子(新潮社)

なんと、7年ぶりの書き下ろし長編。

<なんだか、変?
あなたは「(あたしの知っている)あなた」じゃないよね・・・?>


澪湖(みおこ)の両親は、若くして結婚したため、(今で言うデキ婚
二人だけで働きながら、
あまりにも早く生まれた子どもを育てる術を持たなかった。
澪湖の父・大介の実家に同居し、
赤ん坊の澪湖の面倒を、祖父母が見ることで、
どうにか若い夫婦は暮らすことができた。
だが、祖母が病にかかり、澪湖の実質的な「母親」となったのは、
まだ高校生だった大介の妹・(やまと)。
結婚しても、実家のすぐそばに住み、
澪湖の最愛の「やまとばちゃん」(=やまとおばちゃん)
であり続けた彼女は、
子ども好きの夫(キョウ叔父さん)が望んで望んで、
不妊治療までした後に、やっと授かった愛娘を亡くしてしまう。
「なんとか、あたしが励ましたい!」
そう願う澪湖の目に映る叔母は、どこかおかしい!?
これは、あたしの知ってる「やまとばちゃん」じゃない。
あたしの「やまとばちゃん」はどこ?
そしてこの人は誰?
叔母に違和感を感じた澪湖は、
元・同級生の木塚君の力を借りて、
その謎と叔母の過去を探り始める。

失われた記憶、
生きていくことの不安、
人間存在の不確かさ、
自分で痛みをひきうけることのできない人生の空虚、
家族という関係の中で醸成され増幅されていく呪詛、
を、
新井素子の得意とする、
濃密な、たたみかけるような心理描写で綴った物語。

「おしまいの日」などのサイコホラー系か?
と、ちょっと腰がひけ気味になったが、
後半は一応SFに分類してもよいだろう。

次々と語り手が変わるロンドは、
澪湖の母・陽湖のあたりで、
「いやー。そっちにいっちゃ、いやー」
な感じになるが、
ラストの、奇妙なまでに清浄な美しさは、
やっぱり新井素子節だ。
よかった(汗)

集英社コバルト文庫の
『あたしの中の・・・』『いつか猫になる日まで』
そして、『星へ行く船』シリーズは別格として、
あたしの好きなのは、
『扉を開けて』
『ラビリンス―迷宮―』
『ディアナ・ディア・ディアス』

で描かれたSFファンタジー世界。
半島シリーズと呼ばれることもある)
高度な文明が一度滅びた後、
数々の神話の残る中世めいた世界で、
それぞれの国の存亡、夢や願い、野心をかけて戦う人びとの物語だ。
「中の国」「西の国」「南の国」「東の国」など、
ある半島で覇を競う異世界の国々と、
『絶句』『二分割幽霊綺譚』でお馴染みの、
「第13あかねマンション」物がリンクする部分もあって楽しい。

やっぱり、
新井素子には、SFやファンタジー、
しかも、できるだけ日常とかけ離れた、
ぶっとんだ設定のもの、を書いてほしいと思うのは、
あたしだけだろうか。

神も世界も宇宙も生も死も、
簡単に、「あたし」「あなた」という、
パーソナル・スペースに引き込んでしまう、
魔法のような文体は、
より浮世離れした物語でこそ生きる気がする。
現実に限りなく近い日常的な世界観のサイコホラーやミステリーでは、
あの素晴らしい持ち味が、
ただのちまちま、うじうじした心理モノになりかねないからだ。

「セカイ系」なんて言葉が、
ネットを席捲する、ずっとずっと前に、
その前身となる作品を数多く生み出していた彼女だからこそ、
リアルな人生よりも、
少年少女が、唐突に世界の存亡に関わるような、
不思議で大きな物語を紡ぎ続けてほしい、と切に思う。

あたしの中の新井素子は、今もSF作家なんだもん。

| 図書カード6年1組ぺんぺん | 07:26 | comments(0) | trackbacks(1) |
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