開店中<復活の恋人>
今日は、遊園地のお話でも。

小さい頃から、
何度も遊びに行った遊園地が、
閉園になってしまって、
さびしい思いをした経験は、
みんな、きっとあると思う。

あたしもある。

ここ何年かのあいだに、
関西圏だけでも、
行ったことのある遊園地やテーマパークが、どんどんなくなってしまった。

伏見桃山城キャッスルランド、
フェスティバルゲート、
神戸ポートピアランド、
宝塚ファミリーランド
・・・

杜撰な管理で、たびたび事故を起こし、
ついには死傷者まで出してしまった、
エキスポランド については、
閉園はやむをえなかったとは思うが、
思い出のある場所がなくなってしまうのは、
ちょっと切ない。

でも、これだけ次々と、全国各地で、閉園が相次ぐということは、
遊園地の経営は、本当に難しいのだ、きっと。

レジャーの多様化、
少子化

そして、不況によって、
利用者自体が減少することに加え、
母体である電鉄会社や各地の第3セクターなどが、
経営難に陥ったり。

厳しい財政の中では、
施設老朽化集客対策などに手が打てず、
どんどん遊園地は魅力を失っていき、
赤字経営を続けるよりは、
建設当初より、はるかに価格が上がっているはずの広大な土地を、
宅地なりなんなりとして売却した方が、手っ取り早い。

素人考えだが、
遊園地の経営に必須なのは、
遠方からの集客
と、
リピーターの獲得
ではないかと思う。

ナガシマスパーランド富士急ハイランド
のバトルで有名な、「世界一のジェットコースター」とか、
「日本最大の観覧車」
などの話題性や、
そこにしかない乗り物、
そこでしか会えないキャラクター、
という独自性で、
遠くからわざわざでも行ってみたいと思わせること。

そして、リピーターの獲得のためには、
USJ
東京ディズニーランド、東京ディズニーシーのように、
広大な敷地と数多くのアトラクションを持ち、
「一日では回りきれない」
「その季節、その日、その時間帯にしか見られないイベントがある」

「随時新しいアトラクションが追加される」
というような、
「また行きたい!」
と思わせる仕掛けが必要だ。

けれど、多くの遊園地では、
老朽化した施設を建て直したり、
アトラクションを新しいモノに入れ替えたり、
というような潤沢な資金はなく、
どんどん古びてさびれて、いつしか消えていくのだ。

田舎のさびれた遊園地の、
しかも、平日の昼間のたたずまいが、
あたしは実は大好きなのだが、
そんな物好きは、やはり少数派であろう(笑)

いいんだけどなあ・・・

鏡が曇ったミラーハウスや、
仕掛けが古すぎて、全然怖くなくて、むしろ笑えるお化け屋敷や、
派手な回転なんかしないのに、
「もしかしたら壊れるかも」
という生命の危険を感じるボロっちさが、
スリル満点なジェットコースター
妙に、ゆっくり回る観覧車
あまりに暇で、いったん止めてあって、
係員さんに声をかけると、
「あ、いま、動かすからね―」
と慌てて作動させてくれる、貸し切り状態の乗り物。
紐のついた画板を首から提げた黄色い帽子の小学生たち。
「ふれあい広場」のようなところの、
特に芸をするわけでもない、やる気のない動物たち。
案外しっかり世話をされて、
季節ごとの美しい花を咲かせている花壇。

乗り物も少なくて、
1回乗ったら飽きてしまうくらい単純で、
自分だって、一度行ったら、
しばらくはもういいや、
と思っていたくせに、
なくなってしまうとさびしい場所。

そんな遊園地のことを思い出したのは、


『復活の恋人』西田俊也(幻冬舎)

を読んだからだろう。

この物語には、
奈良で生まれ育ったあたしには、
とても馴染み深い、ふたつの遊園地が登場する。

近鉄あやめ池遊園地

奈良ドリームランド。

いまはもうこの世界から消えてしまった遊園地。

そう。
これはきっと、
失われた場所失われた時間
についてのお話なのだ。

主人公の「ぼく」(青木タモツ)は中学3年生。
入試のときに、ともにハプニングに巻き込まれたことをきっかけに、
お互い意識しながらも、少しも先に進まなかった淡い恋・・・
その同級生ナイトこと小夜子が
「ぼく」に転校することを告げ、
二人は遊園地でのデートの約束を交わす。
デートの前日、親友に借りたレコードを返しに行く途中に、
轢き逃げ事故に遭った「ぼく」は、そのまま昏睡状態に。

ある日、突然「ぼく」は目覚めた。
医者は『奇跡だ』と言った。
「ぼくはどうしたんだろう」
「デートはどうなったのだろう?」
大好きなナイト(小夜子)は親友の妻になった後に、離婚していた。
再会した彼女は、きれいな大人の女の人だった。
「ぼく」は、20年間も眠り続けていたのだ。

身体は35歳のおじさん、でも心は15歳のまま。
「ぼく」が好きなのは、昔の彼女なのか、今の彼女なのか。
失われた時間に戸惑う「ぼく」は、
何をどうしたらよいかわからないまま、
とりあえず高校へ通うことにした。
そこで「ぼく」は、自分ほどではないが、
休学のため周囲より少し年上の、個性的な少女、鳥野一子
と友だちになる。

現代の「浦島太郎」にして、
35歳のおじさん高校生
不思議で切ない恋愛小説。

本の表紙の写真は、
「ぼく」とナイトがするはずだった初デートの待ち合わせ場所、
近鉄あやめ池駅の改札。
このすぐ前に、近鉄あやめ池遊園地があったのだ。

そして、「ぼく」が通うことになった高校の裏山は、
「奈良ドリームランド」の敷地に繋がっている。

レコードはCDになり、
人びとがみな携帯電話を持っていて、
父親は呆けはじめ、
高校では変態エロオヤジ扱い、
昔の同級生はおじさんに見え、
大好きな女の子はすでに結婚離婚を経験している。
そして、ふたつの遊園地が閉園する。
20年はそれほどに長い。

知ってる場所が舞台だから、
余計に切ないのだ。
あたしがゆっくり見てきた変化を
本人には一瞬の、そして周囲には長すぎる眠りのあいだに、
飛び越えてしまった「ぼく」が。

| 店のこと | 10:09 | comments(0) | trackbacks(3) |
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